足長おじさん

 

金づるとなったお金くれる人との出会いで収入を得る友人の話 郊外店と言う考え方がまだあまりなかった頃かな。都心で買えるものをわざわざ郊外に車で出て買いに行くと言う考えは薄かったと思うんだよ。 出店側にしてみれば、都心だと地価が高いので儲けは出にくい。郊外は地価は安いが儲けは出ない。ただ、どんなに売り上げを重ねても地代で利益を持っていかれるのは空しいものだよ。だから、僕が勤めていた本とCDの複合店も都心には一切目を向けずに固定費が安い郊外出店ばかりだった。 だが、結果は惨憺たるものだった。考えてもみてほしいが、誰が車に乗って郊外の店まで週刊誌やミスチルのCD(世代がバレるなあ)を買いに来ると言うのだ?山手から吹き降ろす風に凍えながら、わずかな地元客の相手をしながら暇を持て余していたものだ。 やがて、経営が行き詰ってうちの会社は倒産した。 それがもう20年くらい前の話になるだろうか。そんなところでキャリアが形成されるわけでもなく、再就職には苦労したものの、今はいちおう出会い系アプリで遊べるくらいに生活は安定している。思えば無駄な時間を過ごしてきたものだ、と思っていた。 そんな時に出会い系アプリで知り合った女の子が、たまたまその郊外の出身だった。そして、彼女は僕が勤めていた店のことを覚えていた。 家から歩いていける距離に、都心まで行かなくても本とCDがたくさん置いてある店がある。当時に小学生だった彼女にしてみれば、足長おじさんがプレゼントをいっぱい置いてくれているような夢のような空間だったそうだ。 彼女の夢を壊さないためにも僕はその店に勤めていたことは敢えて言わなかった。利益ベースに乗らなかったもののこうして地元の子供たちに夢を与えていたんだなと考えると、決して20年前の僕は無駄な時間を過ごしていたわけではなかったのだな、としみじみと思った。 「そうそう。時効だから言っちゃうけど、足長おじさんありがとう!と思いながら、いろいろもらっちゃったものだよ。実家帰ったらまだあるんじゃないかな?修二と彰の写真集とか」 そうだよなあ。全然売り上げが伸びないうえに大量に万引きされ続けてうちの店はつぶれたんだよな。でも足長おじさんとなって彼女のような存在を育成してこうして大人になった今、出会い系で美味しい思いをさせてもらっているんだから、やっぱりあの頃は無駄な時間ではなかったのだろう。 金づる 金づるの女

 

 

 

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