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ざまあみろ。 バインダーの上、必死でペンを走らせながら私は1人、ほくそ笑む。 ビデオを巻き戻し、書き殴り続けたメモを睨み、試合の記憶を辿り、とにかくペ ンを走らせる。 心臓は、耳障りなほどに高く鳴る。 気を抜けば足は震え、文字が揺れる。 それでも私は、書くのを止めない。 ほんの少し前ならば、彼はその手を動かすことはなかっただろう。 誰か他人と共有するサインを、形どることなんてなかっただろう。 そもそも何かを共有することすら、2人の例外を除けば、ありえなかっただろう。 それがどうだ。 ベンチにいるたかが1人の女を当てにしているだなんて。 以前の彼なら、まず間違いなくその明晰すぎるほどに冴え渡った頭脳の片隅 で計算し尽くしていたはずのくせに。 それゆえの「ざまあみろ」、だ。 もう貴方はひとりじゃ生きられない。 プレイの成功率を洗い出すことでさえ、人の手を借りてしまう くらいの貴方の周りには、既に振り払えないほどの仲間がいるんだもの。 ざまあみろ。 ざまあみろ。 最後の数字を書き付けて、ペン先を止めた。 下唇を噛む。 あたしの力なら、いくらでも貸してあげる。 だから。 だから、お願い。 ……お願いだから、ボールを奪って。 震えそうになる全身を抑えつけるために、深く深く息を吸い込んだ。 一度、目を閉じて。 開ける。 さっき自分で書いたばかりのパーセンテージを読み取った。 フィールドの中の男が、焦がれるような熱い視線でこちらを見つめている。 彼の想い人である、3桁の数字をなぞった。 1人きりであったあの時よりも、余程強くなったように思える瞳の光を睨みつけ ながら、 あたしはありったけの思いを込めて、指を曲げて見せた。 私は願う ――― ヒルまも氷河期時代の脳内補完。 |