(元ネタ(twitter診断)→「一時間以内に4RTされたら、電車の中で、目を閉じて耳元で愛を囁くレニアーをかきましょう。 http://shindanmaker.com/68894」)



ガタンゴトン、ガタンゴトン。
規則的に響き渡る音と共に足場が揺れる。どこに倒れるか分からない不安定な自分の身体が自分で怖くて、先ほどからずっと気を緩められずにいる。人がたくさん居るところで転ぶのはやっぱり恥ずかしい。
そんな私の気持ちを無視するかのように、この乗り物は悪戯を続ける。突然一際大きく揺れ動いて踵が浮いた。

「きゃ……っ!」

ぐらり。傾きかけて、咄嗟に目の前で平然としているその人にしがみつく。
声を上げたことで集めてしまった周りの視線が痛い。けれどそんなことより、次はいつ転びそうになるかという不安の方が勝った。
黒い服の胸元を指で手繰り寄せる。顔も一緒に埋めてほうと息を吐くと、ようやく僅かな安堵が生まれた。
そろりと視線を上げてみる。窓の外は丁度川べりを渡っていた。そこから覗く青に負けないくらい綺麗な瞳が、まっすぐ私を捉えている。

「……レニ……」
「お前に電車は向かないな」

小さく笑いながら片腕で私の腰を抱えて、もう片方を上に伸ばす。頭上でずらりと整列して吊り下げられた三角の飾りの一つを掴む。まるで肘から上がフックになったみたいにそこへぶら下げるようにして。
よく見たら、周りには掴まるところがたくさんあることに気付く。座席の前にある同じものなら届きそうだけど、自分で開いたり閉じたりを繰り返すドアの前にあるものは一段高くなっていて、私にはギリギリ届くくらいの位置になっている。このままレニに支えてもらってる方が私はずっと安心だけど、迷惑になるかな?自分で掴まるところに移動した方がいいかな。
そんなことを考えていると、不意にまたぐらりと大きく揺さぶられる。さっきと逆方向。つま先が浮いて背中から倒れそうになったところを、レニの腕に助けられる。
きゃっとまた声を漏らしながら、反動で勢いよくレニにぶつかる。先ほどよりも小さくなった身体と身体の隙間。肩越しに周囲の視線を見つけて、今度こそ恥ずかしさが一気に沸き上がってきた。

「ご、ごめん……私……」
「大胆に抱きつかれるのは悪くないが、少し落ち着け」
「レ、レニ!」

余計に羞恥を煽るようなことを笑ったまま言うものだから、かあっと頬が熱くなる。居堪らなさに逃げたくても、更に強く抱きしめられては叶わない。
仕方なく目を閉じて、顔をすっぽり胸に埋めてしまう。
ガタンゴトン、ガタンゴトン。
変わらず刻まれる賑やかなリズムに混じって、くすくすと空気を震わせる音が聞こえる。それの正体を確かめるより早く、満足げな唇が柔らかく耳たぶに落とされた。

「……その可愛い顔、俺以外の誰にも見せるなよ」



(ぐらり、くらり *2011.12.23/written by sakura)


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