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アンジェロス―俺は天使に恋をする―@




「おっせぇなぁ」

恭弥が待ち合わせの場所に来ない。

いつもなら待ち合わせに遅れて、咬み殺されるのは俺なのに。

携帯電話を何度コールしても恭弥は出なかった。

俺は心配になって恭弥の家に向かった。





合鍵でドアを開けると、そこには先日俺がプレゼントした可愛らしいミュールが置き去りにされていた。

恭弥がいつも学校へ履いて行くローファーも隣にきちんと並んでいるから行き違いになったわけではなさそうだった。

上がりこんでリビングに向かうと、その中央に恭弥は立ち尽くしていた。

「恭弥」

名を呼ぶと、恭弥は振り返って泣きはらして赤くなった目を俺に向ける。

「でぃ……の」

声が、掠れている。

「どうしたんだ?」

近づいて頭を撫でると、俯かれた。

「心配したぞ」

いつものように抱きしめると、恭弥の身体がびくりとこわばった。

「どうした?」

俺のこと嫌いになった、と聞こうとして俺は抱きしめた身体に違和感を抱いた。

いつもより硬い。

腕に、俺の身体に骨が当たっている。

しかも、心なしいつもより恭弥の頭が上の位置にあるような気がした。

俺がその可能性を口にする前に、恭弥が顔を上げた。

「どうしようっ。僕、戻っちゃったっ」

いつもより低い声で叫んで恭弥は俺の胸に顔を埋めるとわんわん泣き出した。

「戻っ、た?」

にわかに信じられなくて呟いたら、

「おっぱいが、おっぱいが無くなっちゃったんだよぉっ」

その声に俺は慌てて抱きしめていた恭弥の身体を放して、服の上から胸部に手を当てた。

昨日までは確かにしていたはずの恭弥の控えめなブラジャーのレースの凹凸が肌に伝わらない。

本当に、本当にまっ平になってしまったのだ。

「どうして……」

その感触に呆然と呟く。

「昨日っ、ディーノとさよならした後に骸に触られたのっ。そしたらっ、……ビックリして、おっぱいなくなっちゃってっ」

その瞬間頭に血が上った。

「骸に触られたのかっ」

恭弥の肩を掴んだからコクコクと頷かれる。

「ぁんのっヤロウっ、凪が居るくせにまだ恭弥に手出そうとしてんのかよっ」

あの、ムカつくナッポー頭を殴りに行きたかった。

でも、恭弥が俺のジャケットをぎゅっと握る。

「どうしよう。このままじゃ僕、消えちゃうっ。ディーノと一緒に居られないっ」

恭弥の大きな黒い瞳からボロボロと涙が零れる。



俺たちはこんなにも愛し合っているのに、神様はなんて皮肉なことをするのだろう。



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