「あんな…小春ちゃんに聞きたいことあんねんけど…」

「どないしはったんです?その奥歯に物が挟まったような口調は。アナタらしくない」

「最近、蔵ノ介、どないしてる?」

「蔵リン?別にいつもと変わらへんけど?」

「そう…」

「そりゃあうちら全国大会負けてもうたけども、これからは後輩育成のために頑張らなあかんて3年はみんな思てるし、 大会終わってから2、3日だけやったんちゃう?蔵リンがぼーっとしてたん」

「そやなぁ、そうやと思うねんけど」

「どないしたんです?」

「最近な、蔵ノ介、わたしと一緒に居てる時、黙り込むことが多いねん」

「蔵リン、別にそないにお喋りちゃうでしょ。さんと居って、リラックスしてる証拠と違うんですか?」

「そやったらエエねんけど、なんかちゃうねん」

わたしはどう言ったらいいのかわからなくなって、ため息を漏らす。

「いつもの沈黙とは違うねん…」

「隠さんと正直に言うてください」

小春は鋭い。

わたしが本当のところを言い出せないこと、分かってる。

「そう…やな」

「大方、蔵リンがセックスしようと迫ってきたんを、拒否したんでしょ」

「セッ…!!」

セックスて!!セックス…て!!!

「こっ、小春ちゃん!もちょっとほら、オブラートに包んで言うてよ!恥ずかしいやんか!!」

「先輩…高校生にもなって、そないにおぼこいこと言うててどないすんです。 蔵リンかて健全な中学生男子ですよ?頭ん中そういうことで一杯に決まってるやないですか」

「……小春ちゃんも?」

「アタシのことは置いといて…で、アナタのことやから、 そういう雰囲気になりそうになるたびに、下手なギャグをかまして逃げてたんでしょ」

「ハイ…」 (置いとくんや…)

「蔵リンもどうにかしたいんやけど、どうしたらエエか分からんくなって、 微妙な沈黙が流れている、と言った感じかしら?」

「殆ど、合うてる」

もう最近は、二人っきりで会うのも気まずくなってきている。

とても、まずい。

蔵ノ介と一緒に居るのは楽しくて好きで、今の状態は本当に不本意や。

もうこんな状態が続くんのはイヤやし、そのセッ−とか何とやらをしてみてもかまへんかな、とも思てるんやけど…。

「ものごっつう居たたまれんのです…」

わたしがボソッと漏らすと、小春はわたしにぐぐっと顔を近づけてきて言うた。

「アナタ、蔵リンのこと、好きやあらへんの?」

小春、わたしよりも年上みたいや。

「好きや」

わたしは、それだけはキッパリと言った。

「手ぇつないだり、キスしたりしたいと思わへんの?」

「手をつなぐんは好き。キ…スすんのも、好きや」

「じゃあ、なんでセックスはあかんの? まぁな、遮二無二やらんといかんもんでもないし、結婚するまでやらへん主義ならそれでもエエし、 したくないならしょうがないと思いますけど」

小春は神妙な顔をして言うた。

「浮気、されますよ」

「ええっ?!」

「先輩も知ってると思いますけど、蔵リンモテるし、ヤりたくてもヤらしてくれへん彼女よりも、 自分のこと好きですって言うてくれて、ヤらしてくれる可愛い女の子の方がエエに決まってるやないですか… とは言いませんけども、蔵リンが迫ってきてんのをそんな下手な誤魔化し方でかわし続けてんのは、良くないと思います。 できへんのならちゃんとできへんて言うて、そんでも付き合うていく方向で話し合わんと、いつか壊れてしまいますよ」

「う…ぐぅ…」

ぐうの音も出ぇへんとはこのことや。

「別にしたくない訳やあらへんねん…」

「年上のプライドですか?また、アナタは変なことで躊躇してはるんでしょ」

「プライドとかちゃう…と、思う…けど、ああ…でもな、自分が素っ裸になって蔵ノ介に見られるのは恥ずかしくてたまらんし、 アカンわ、そんな、あんなやらしいDVDみたいに、あんなんできへん!」

「先輩…何を参考にしてはるんです…」

小春が呆れたようにわたしを見る。

そう、ついほんのちょっとした出来心で、友達と一緒に、友達のお兄ちゃんのアダルトDVD鑑賞会をしたことがあるのだ。

それを見た時は、それなりにショックとインパクトは受けたけども、エラいことするもんや、と、どこか他人事に見ていたきらいがあり、 今こんな風に、自分の身の上に降りかかってくる現実として目の前に突きつけられると、とてもやないけどそないなことでけへん!と怖気づいてしまう。

「あんな声、出せんし、あんなん…うわぁ、無理や、絶対に無理や!」

「先輩、最初っからフェラとかしたら、蔵リンかて引きますよ、多分。最初は大人しゅうされるがままでエエんです」

「…ホンマ?」 (ていうか、わたし別にフェ…のこと言うてへんのに、何で分かるんや)

「ホンマです」 (この人、どないなDVD見たんや、初っ端から、がっつりフェラとか騎乗位でガンガンやるもんやと思てるんやないやろな。 まさか、そこまでアホちゃうやろ…)

小春はわたしをジロジロ見ながら、ため息の代わりに鼻から息を漏らした。

「わたしのこと、バカにしてるやろ」

「バカにはしてませんけど、蔵リンが哀れになってきましたわ」

小春は、わたしの鼻をぐりぐりと押しながら言うた。

「先輩、無頓着過ぎ!」

「うっ!」

「蔵リンの気持ちも考えたって」

真剣な目で小春に言われた。

「…わかった」

情けない…。

わたしは、今まで逃げてばかりやった。

ホンマ、蔵ノ介よりも年上やのに、情けない。

「わたし、自分のことしか考えてへんかった…」

うなだれるわたしに、小春は優しく言うてくれた。

「初めてのセックスて、女の子には一大事やからね。 そないに急ぐことあらへんのよ、蔵リンかて分かってくれると思うし」

「ううん、小春ちゃんに相談したら踏ん切りがついたわ。 わたし、頑張るわ!」

(この人、また頑張る方向間違うんやあらへんやろな…)

小春は、わたしを不安気に見てる。

「でな、首尾よう行ったら報告するな!」

「要らんわ!!」

小春に思っくそ素早く突っ込まれた。












「ほんまにエエの?」

「ウン」

「突然、どないしたん?」

「心境の…変化かな」

「……」

親が居ない日曜日。

蔵ノ介を家に呼んだ。



「…あんな、今日、夕方までウチの親、帰って来ぇへんの…」

「…さ、さよか…」

ここのところ、二人で会っても、そこいら辺を散歩したり買い物したり、なるべく二人っきりにならんように時間を潰して、 それから「そろそろ…帰ろか」と、どちらともなく言い出して、バイバイする展開やった。

今日は、わたしから、蔵ノ介に電話をして、ウチに呼んだ。

「あの…だからな…その…な、エエんよ」

「あ…え…」

「ここで何を、っちゅーたら殴るで」

わたしは、おろおろする蔵ノ介を見ていられず、顔を背けて言い放った。

(セックスじゃ!エッチじゃ!分かってるやろ)

さすがにそこまでは言えんかったけど、背中を思いっきりどついてやった。

「いっ!わかっとるけど!」

蔵ノ介は、すぅっと息を吸い込んでから、言う。

「…ホンマにエエんか?別に俺、無理にせんでもエエんやで」

優しいな。

「わたしな…自分のことばっかり考えてた、て、思い知ってな。 蔵ノ介のこと好きやのに、ちっとも…ちょ!何?」

恥ずかしいんで背中を向けて喋っとったら、後ろからぎゅっと抱きしめられた。

「好きや」

(ぐわぁ!アカン!何や、コレ!アカンて!!)

蔵ノ介の吐息が耳にかかって、わたしはこのベッタベタの甘い展開に、眩暈がする。

(笑ろたらアカン、ここで雰囲気壊すようなことを言ったらお終いやで、わたし!)

わたしは、心の中で般若心経を唱えながら目を閉じた。

首の後ろに手が回って、顔を蔵ノ介の方に向けさせられた。

(目、開けたらアカンのやろな)

あったかい感触をくちびるの上に感じて、キスしてるなと思う。

ゆっくりとくちびると押し付けあっていると、どんどん鼓動が早くなってきて、それから、 息が上がってくる。

わたしがくちびるを開く前に、痺れを切らした蔵ノ介が、舌を入れてきた。

「や…っふ」

思わず、声が漏れた。

じりじりと身体が勝手に逃げ出そうとする。

腰が引けてる、わたし。

そしたら、蔵ノ介が、わたしの腰をぐいと引き寄せた。

「逃げんな」

くちびるを離して、わたしをじっと見て、そう言った。

わたしの目の焦点は合っていなくて、ただただ、生々しく唾液に光る、蔵ノ介のくちびるのアップを、やけにヤらしいわ…とぼんやり思う。

「う…ん」

腕を伸ばして蔵ノ介の肩にまわす。

「わたしも、好きや」

さっきの返答のつもりだ。

それから、キスの続きをした。






(やっぱり押し倒されるんやなぁ…)

キスを続けながら、どんどん蔵ノ介が上から圧し掛かる感じになってきて、それから押し倒された。

小春に報告するという義務があるわたしは、状況を克明に記憶しておく責任がある。

(小春もこういう風にエッチするんかなぁ…ていうか、こういう時、小春はどっちなんやろ)

「ひゃっ!」

小春のことを考えていたら、急に首に噛み付かれた。

「上の空で何考えてんの」

蔵ノ介がわたしを睨んどる。

「俺のこと、見て」

他の男のこと考えてたん、バレたか。

「…ごめん」

だって、他のことに意識を飛ばしてないと、恥ずかしくてどうにかなりそうなんやもん。

今かて、蔵ノ介がわたしの胸、服の上から触ってんの、払いのけたいん、一所懸命我慢してるのに。

わたし、そんなに胸ないし、これで本物見せたら、ガッカリするんやないかな。

蔵ノ介が、わたしをじっと見て言う。

「何考えてた?」

「堪忍して」

小春のこと考えてたって言えるわけあらへん。

「いーや、許さん」

蔵ノ介は、ぐいっとわたしのシャツをまくって、ついでにブラまでズリ上げよった。

「うわっ!」

(ボタンが飛ぶわ!)

ようようそこまでは言わんかったけど、蔵ノ介の頭をはたいてやりたかった。

「ちょ、待ってよ、ボタン外すから」

鼻息の荒い蔵ノ介をどうどうと鎮めて、わたしはシャツを元通りに戻して、ボタンをひとつずつ外す。

(あ…ブラ、ズれとるわ、うわ、もう胸丸出しや…どないしよ)

ちょうど真ん中までボタンを外し終えて、手が止まった。

蔵ノ介は大人しゅう待ってる。

(アカン…ここは、こうしよ)

わたしは、わたしを見下ろす蔵ノ介をにっこりと笑って見上げて、蔵ノ介のシャツのボタンを外し始めた。

(大して時間稼ぎにもならへんけど…)

なるべくゆっくりひとつひとつのボタンを外す。

「やば…」

声に出して言ってしまうほどに、蔵ノ介の身体は見事だった。

「何なん?アンタ…ちょっと、すごいな」

蔵ノ介は、わたしの顔を見て少し照れたように笑った。

(うわ、今のめっちゃエエ顔やった!)

わたしは夢中になってボタンを外し終え、蔵ノ介がシャツの袖を自分から外そうとしているのももどかしくて、 一緒になって脱がしてしまった。

「そんなに焦らんと…」

蔵ノ介にそう言われて、夢中になっている自分に気が付いて、顔がカーっと熱くなった。

「今度は、の番な」

「残りは、蔵ノ介が外して…」

わたしは目を瞑った。

蔵ノ介はわたしに軽くキスをして、それからわたしのシャツの残りのボタンを、ひとつ、またひとつと外して行く。

呼吸が速くなる。

もう全部外れて、シャツははだけられた。

きっと、わたしの平べったい胸は、ひどく上下しているに違いない。

しっとりと汗に濡れた手の平が、わたしの片方の胸にそおっと触れる。

「んっ」

わたしは更にぎゅっと目を瞑る。

すごくそっとそっと触ってくる。

「や…」

恥ずかしいようなもどかしいような、もう居ても立ってもいられないような気持ち。

ぺろんと先端を舐められた。

「あぁん!」

やらしい声が出た!

「もっ、ダメ、アカンて」

顔を隠したら、蔵ノ介が顔を覆った手の平に、くちびるを付けてきた。

「大丈夫やって、俺に任せて」

「そんなん…ダメ」

「何で?」

「だって…そんなん…怖いわ…」

「…俺が頼りない?」

「違う、違うけども…」

頭の中が混乱する。

「俺、のことが大好きやし、どんなでも愛せるで」

!!

蔵ノ介のとんでもない台詞に、わたしの頭のネジは吹っ飛んだ。

「だから、もう全部、俺に任とき」

わたしは、ぎゅっとシーツを掴んだ。

蔵ノ介は、そろそろとわたしの合わさった脚を開いて、その奥へと指を進めようとする。

ごくりと唾を飲み込む音。

わたしは目を瞑っているので、蔵ノ介がどんな顔をしているのかわからない。

ゆっくりと指がわたしのそこを探る。

何回か周辺を往復して、それからゆるゆると中に入ってきた。

「…っ!」

わたしは息を止める。

「力抜いて」

そんなこと言うても、蔵ノ介の指、太いんやもん。

そう訴えたかったが、首筋にキスされてふうっと息が漏れて、もっと奥にぐっと指が押し込まれて、わたしは背筋がぞわっとして、息を飲み込んだ。

「痛い?」

「…だい…じょうぶ…だと…思いますが…いささか…」

「だいぶ濡れとんのやけどな」

「なっ!!」

目をカッと開いて蔵ノ介を見ると、やけにエロい目でわたしを見下ろしている。

「気持ちエエやろ」

顔が近づいてきて、耳元で囁かれた。

「ひやぁあ」

そのまま耳を舐められて、下の方は更にずずっと指を差し入れられた。

「あああっ」

思わず腰が浮いてしまう。

「エエ子や」

「やっ…あん…」

もう自分の声じゃないようなやらしい声が出てしまって、腰も勝手にくねくね動いとる。

「やだ!も…ぉっ、蔵ノ介…やめっ…」

「アカン、ん中、俺の指、離してくれへんで」

「もっ…!」

何てこと、言うんや!!

わたしのうなじに、胸元に、キスをしながら、そして、胸の頂点のちょっと脇に、ちゅうっと吸い付いた。

「何してん?!」

「キスマーク。が俺のもんやって印つけとかんと」

ここなら見えへんやろ?と、顔を上げてにやりと笑う。

「ぁん」

その間にも、わたしの脚の間の指は、ゆっくりと抜き差しされていて、自分にもそこがくちゅくちゅ音を立てているのが聞こえる。

「蔵ノ介…」

わたしはため息と共に名前を呼ぶ。

「何?」

低い優しい声で答える。

「どうしよ、めっちゃ気持ちエエわ」

「せやろ?」

もう、その得意そうなどや顔はなんやの。

「どこで練習したん…んっ!!」

敏感になったところを、きゅっと撫でられた。

「練習?」

「あん!…だって、蔵ノ介、絶対本番前に練習してるわ、やらしっ…DVDでも見て勉強…したんやろ…ぉっ」

絶対そうやわ、ミスターパーフェクトやもん、蔵ノ介。

DVD片っ端から借りて(誰に?)、キスから押し倒して服脱がして、そっからどんな風に攻めていったらエエか流れを組み立てて、 乳の揉み方から指の動かし方やら、アレ絶対、一人で練習してたって。

わたしは、そんな蔵ノ介の姿を想像してしまった。

蔵ノ介、頑張ったんやろなぁ…真面目な顔して、やらしいDVDの流れるテレビの画面を見つめてたんやろなぁ…。

「ふふっ…」

肩が震える。

こらえろ、わたし。

「…本番て…練習て…勉強て…」

蔵ノ介の指の動きが止まった。

「あ…れ?」

…」

「…蔵ノ介?」



「何で、ここでそないなこと言うんやー!!雰囲気ぶち壊しやー!!!」












「アナタ、正真正銘真性のアホちゃう?」

「すません…」

「あたしに謝ったってしょうがないでしょ、蔵リンによお愛想尽かされんかったわね」

「約束したし」

「約束?」

「今度は蔵ノ介の好きなようにさせるって」

「それで許してもらえるんなら、安いもんやないの」

「…うん」

「で、何すんの?」

「…下着」

「紐パンとか?大事なトコに穴開いてる奴とか?」

「ううん、蔵ノ介は清楚な白レースがお好みやった」

「持ってへんの?」

「わたしの持ってんのとはちょっと趣味が違うみたい」

「ふぅん、でも、それくらいなら可愛らしいもんやないの」

「それと…」

「まだあんの?」

「制服でやりたいて…」

「……ああ」

「汚れそうやからイヤやってんけど」

「まぁ洗えばエエしな」

「うん…」

「それで?」

「それから、なんや……ご奉仕せなアカンのやて」

(蔵リン…)

小春が黙ってもうた。

「なぁ、どう思う?!結局あん時はそっから何もできへんかったんやで?! わたしちゃんと謝ったんやし、最初っから仕切り直しでエエやんか! 下着と制服はしゃーないから妥協するとして、そのご奉仕って何なん?」

「−て、蔵リンには言えへんのやろ」

「ハイ…」

「頑張るしかないわ」

「ハイ…」

「あんたも心底イヤやないんやろ」

「ハイ…」

「結構気持ち良かったん違う?」

「ハイ…」

「蔵リン、努力家やからねぇ」

「ヘェ…」

(返事が投げやりになっとるし)

「で、アナタがまだワタシに聞きたいことがあるんやろ」

「……それやねん、あんな、その…ご奉仕て、どないしてやればエエの?」



「自分で考えろや、ボゲェ!!」



小春に地声で怒られた。









終わり!酷い!!

モドル







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