これは恋じゃないと、うわ、おぞましいや、恋だってよ。

いつもいつだって傍にいたいと、オレだけを見て欲しいって、そう思ったりなんかしないから、だから、恋じゃねーったら。







友達






「なぁ、南、許してよ」

そろそろ口きいてくんないかなぁ…。

だってさ、はもうとっくに亜久津のものになってて、オレがを抱いたのは、遥かムカシのことになってないかな?

そうだよ1ヶ月前なんて、もう昔々の出来事。

あん時、ゴムするの忘れちゃて、もし万が一が妊娠しちゃったりしたらシャレになんねぇとかちょっと思ったけれど、ラッキーなことに何ともなくって、 てか、どうして、オレ、避妊するの忘れてたんだろ。

(ベッドの脇にはいつだってコンドームが用意されているのだ!)

でもさぁ、女の子だって、そういうの気をつけるべきだと思わない?

男はミサカイないんだから、ちょっと一言言ってくれりゃ思い出すことだってあるわけで



オレはヨユーがなかった。



も、多分、ヨユーがなかった。












はとても色っぽくなった。

フェロモンが出てるし。

亜久津のおかげ?

そう聞いたら笑って言った。

「仁とはエッチしてないんだよ」

?!

「そんなに驚いた顔しないでよ」

女はわからない。






オレが抱いた時、はとても切ない声を上げて、オレはそれに嫉妬した。

の身体はどこもかしこも柔らかくて、オレはそれに嫉妬した。

目の前にひろがるの黒い髪に指を絡めながら、それを思いっ切り引っぱってやりたい衝動にオレは駆られていた。

は、そんなオレの背中を爪で引っ掻いた。



オレらは、全然通じ合ってなかったのに、一緒に、イった。















だから、本当は分かってたんだ。

身体のことなんか、何の意味もないこと。

オレがを抱こうと、亜久津がとヤってなかろうと。

それでも、チャンスだと思った。

「なー、南、、亜久津とエッチしてないんだってよ。今なら取り返すこと、できるべ?」

「………千石、お前、バカか?」

オレは、南と話す絶好のチャンスだと、思った。

でも、南はオレのことすっごい冷たい目で見やがった。

「南は、オレが、南にこういう仕打ちされるのはトーゼンだと思ってる?」

南は黙ったままだ。

「どうなんだよ」

「…俺にその質問するのか?」

「オレのせいでとダメになったから、だから、オレとはもう喋りたくない?」

「わかんねーんだよ」

「南」

「俺はお前のこと友達だと思ってた。なのに、なんであんなことしたんだよ?」



友達だから、大丈夫だろ。

恋人じゃないから、憎しみあって別れることなんてないだろ。

笑って済ませられることだろ。

そんな風に思ってたって言ったら、コイツ、どんな顔するんだろ。

オレのこと、軽蔑するかな。

心底、軽蔑するかな。



「だってさ、つまんなかったんだもん」

「千石」

「南はとばっか会っててさ オレ、ヒマだったんだよねー」

だから、いなくなればいいと思ったんだよ。



「そんな理由でか?」

「そう」

南がオレを睨む。

そんな理由なんだよ。

南。

オレは、お前を一人占めしたかったんだよ。






南がオレの襟元を掴んだ。

顔が近づく。

足先が浮く。

「お前には、わかんねーだろうな」

オレがなんでを抱いたかなんて。

の中に残ってるお前の欠片を探してたなんて。

お前に触れることができるに嫉妬していたなんて。

できれば、オレが代わりにお前と、ヤりたいだなんて。

何もかもが、お前の代わりだっただなんて。

…何も、お前の代わりにはなりゃしないんだなんて。

はは、わかんねーだろ。






南にキスした。






「千石っ?!ばっ、お前っ!!」

オレは床に放り出されて、南はくちびるをぐいって拭って去っていった。

南は、またオレのタチの悪い冗談だと思うだろう。

でも、オレにとっては別れのキス。

友達だったお前とオレとの。

これで、友達じゃない。

オレら、友達じゃないな。

これで、おしまい。












「ねー、亜久津はどーしてとセックスしないの?」

微かにタバコを持つ手が震えた気がした。



「できねーんだよ」



珍しく、亜久津が本音を漏らした。

亜久津の気持ちがわかる気がした。

オレは、くちびるが痛い。

さっき、南とキスをしたくちびるがイタイ。

きっとさ、亜久津は、と触れ合う全てがイタイんだ。

怖がりな、亜久津。

臆病な、オレ。

これ以上、何もできないよ。

心のどこかで、拒否される事を恐れてる。

それでも、どうしても止められない欲望を別のところにぶつけてしまって、死ぬほど後悔する。

本当に、息ができないくらいになって。

ホラ、やっぱり、こうなった。

思ってたとおりだっただろ。

何、期待してたんだ、オレ。

そんなぐちゃぐちゃな思いを受け止めてくれる相手は一人もいなくて、 何よりも受け止めて欲しい相手はたった一人しかいなくて。

壊しちゃえよ。

いっそ、壊しちまえばいいんだ。

そうだろ?

だから、ぶっ壊してやった!












「千石」

日も暮れる。

あたたかいオレンジ色の夕日。

手をつなぐ相手を、無意識に探してた。

傷付けなくても、すむ、相手を。

「千石」

はわかってるんだなって、その目を見て思った。

優しい目をしてた。

優しい声をしてた。



オレ、もうダメかも…。

言葉を飲み込んだオレを、は優しく抱いてくれた。

大丈夫だよって。

わたしは、わかってるよって。

よかった…オレには、がいた。

そう思っていいのかな。

「うまくいかないよね」

ああ、オレたち。

同じだ。

南が好き。












あん時みたくがっつかなくてもよかった。

今度は、何のために、セックスするのか、お互いわかってたから。

慰め合うんだ。

届かない気持ちを、どこにも持って行きようもない気持ちを、たった一人だけ理解してくれる目の前の相手にぶつけるために、お互い、抱き合うんだ。

オレたちは、トモダチ。

キスさえも、穏やか。






「千石…」

「何?」

「今度はちゃんと避妊してよ」

「オッケー、わかってる」

「それから…」

「だいじょぶだよ、亜久津には黙ってる」

「ワルイ女だね、わたし」

「だいじょーぶだよ、コレは罪じゃない」



黙っていればいい。

そしたら、誰も傷つかない。

オレ達にも何も残らない。

だってさ、コレは、生殖行為じゃないから。

そんなに神聖なモノではないから。

ただ、一瞬だけ、忘れるために。

そのためだけに。

お互いを利用するんだ。






これは恋じゃない。

うん、恋じゃない。

こんなぬるくて優しいカンケイ。






のくちびるは南のよりぷりぷりしてて、そういえば南のくちびるはちょっと荒れてたなって思った。

の身体はどこまでも柔らかくてすべすべしてて、あったかくて、触ってて気持ちイイ。

南の身体はゴツイ。

オレよかガタイがいいし。

はいい匂いがする。

南はどんな匂いがするんだろう。






…ダメだ。

オレ、南に恋してる。









fin.

モドル







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