「イタイイタイイタイ!!!」

「…ウルセェ」

「てか、本気で痛いっての!!」

「マジうるせぇ、黙ってヤらせろ」

「…最低」

俺に背中を向けて、代わりに壁と向き合いやがった。







筋肉の柔軟性







「千石くん…」

「おや、まぁ、ちゃん」

リアクションがヘンだよ…。

「亜久津…今日見た?」

「ううん、今日は見てないなぁ…どしたの?」

「何でもない」

「ケンカでもした?」

「う…・」

「電話してさ、メンゴ!って言えばいいじゃん」

「う…ん」

ですから、そんなにお気軽に、メンゴって言える相手ではないのです。






「どうしよう…」

問題は、あの亜久津のやたら柔らかい身体にあるのだ。

問題は、わたしのかったーい身体にあるのだ。

教室の窓から、体育の授業をやってる男子を眺めながら、そこには亜久津の姿はもちろんなかったけれど、 いたとしたら、こんなに遠くからでもはっきりと、その姿は”亜久津仁”だってわかるに違いない。

わたしだけじゃない。

この、学校の、誰にだって。



亜久津は、スポーツ万能だ。

本当にすっごい綺麗な動きをする。

100m走―ダントツの1位。

走り幅跳び―見とれるくらいのフォームで飛ぶ。

反復横飛び―…真面目にやってるし…それだけですごい。

ハンドボール投げ―飛ばし過ぎ。

何よりもね…立位体前屈―なんでそんなに曲がるかなぁ、おかしいよ。

と、これは、今年のスポーツテストでの話。



―からだかたくてごめん



とりあえず、メールを送ってみた。

見てくれるかわからないけれど。












…あのバカ。

膝を持ち上げたら、それだけで痛いと言いやがった。

身体硬すぎんだよ。

挙句の果ては、ヤってる最中に素に戻りやがった。

ふざけんじゃねえ!

俺が恥ずかしいだろうが!!









―酢飲め

亜久津から返事が来た!

しかしナンダコリャ。

おばあちゃんの知恵袋的なメールが…。









「…やっぱしダメ」

「お前…いい加減にシロ」

「入り口が裂けそう…ていうか、この前の時は裂けた」

「それ、なんか違うんじゃねえ?」

「だって普通にやってる時はそんなことないよ?」

「引っぱられて、それに入れるから、裂けんのか…?」

「そうなんじゃない?だからお願い、足を肩にかけたりとか、やめて」

「つまんねぇ」

「…何だ、ソレ。仁は、わたしとやるだけのために付き合ってんの?」

「………」

「そうなの?…だから、あそこの入り口が切れようがどーでもいいわけね!」

「んなこと言ってねぇだろが」

だから!ヤってる最中に、フツーの顔して喋り始めんじゃねぇ!!

「あっ!タメ息ついちゃって、もう、亜久津ったら、ホント、最低だ」

俺の枕握り締めて…泣きそうな顔して悪態ついてんじゃねぇ。






「あ…」

枕ごと抱き締められた。

「う…」

クソォ…最後は優しいんだよな、卑怯者。

「バカ」

「あ゛?誰に向かって言ってんだ?」

黙っててくれると、もっと、いいんだけどな。

「仁のバカ」

それから、亜久津が何も言わないうちに、さっさとそのくちびるをふさいでやった。









「これくらいなら、ヘーキ…だろ?」

「んっ」

片足だけで痛いとか言いやがったら、マジ、ぶっ殺す。

「あの・・ねっ、わたし、わかった」

「何を?」

「仁のが…おっきすぎんだよ」

「!」

「だっ、からさぁ、引っぱられて入れる時に…入り口が切れちゃうの…」

その話かよ!!

「お前が、身体かてーからだろよ」

「ちっ、がう…もん。確かに身体はカタイけど…でもっ…」

閉じていた目を開いて、俺を見上げてきた。

「わかった…わかったから、もう余計なこと喋んな」

素に戻んなっつーの!俺が、イけねぇだろ、ったく!!









ヘンだ…。

終わったのに、亜久津がタバコを吸わない。

いっぺん手を伸ばしたけど、思いなおしたように引っ込めた。

「何?どしたの?」

…お前、ちょっと起きろ」

「ナンデ?」

「…今から、柔軟体操する」

ハァ?!






fin.

モドル







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