お 花 見




ホカゲ「トウキさん大変だ!」

電話のトウキ『な、なにが!』

ホカゲ「明日フエン来れねぇか?」

電話のトウキ『行く、いったいどうしたんだ!』

ホカゲ「お花見です」

電話のトウキ『あ、お花見かあ』





春爛漫、フエンタウン。

この山中の温泉地に、待望の桜が開花した。

マグマ団本部から20人程の団員が、昔ながらの荷車を引っ張って出てきた。

テント・寝袋・食糧の缶詰…そして大量に巻かれたブルーシートを積んでいる。

ほぼ全員、新しく頂戴したばかりの団服を正しく着用している。


ベテラン団員「これより我々は、"花見宴"の場所取り任務へ出発する!」

新人下っ端達『は〜い!』

ベテラン団員「新人恒例の初任務であり、今後の評価に多大に影響するぞ!」

新人「だから〜良い席とればいいんしょ、あとは寝て待ちゃいいんだろ」

ベテラン団員「お前、団服はフードもしっかり被れ!(こいつ、マイナス5点)」

新人「先輩、もっと難問フッかけちゃっても大丈夫すよ」

ベテラン団員「新人団員の君達に一任する、頑張りなさい(粋がりやがって)」

新人下っ端達『は〜い!(楽勝だぁ♪)』

ベテラン団員「よし では出発だ!(明日も例年通り荒れそうだぁ…♪)」





マグマ団、春のお楽しみ行事…花見宴。

本部施設の至る所に、お知らせポスターが貼られていた。

1週間ほど前からその下に投票箱が設けられ、

マグマ団員は各自に1枚配布された投票用紙に、

好きな弁当の具を書いて投票するよう義務づけられていたのだが、

つい先程、弁当係りの団員がやって来て投票箱を回収した。

前日準備で只今の時間は、上層部の会議室で開票・集計が行われている。

花見は明日。刻々と迫っていた。


マツブサ「さーて、明日のお弁当ですよ!」

マツブサが最後に、マグマ団幹部のリクエストを訊ねた。

バンナイ「俺、寿司です!寿司に入れます!!」

バンナイが勢いよく手を上げ立ち上がった。

ホカゲ「寿司かー、寿司いいよな寿司」

バンナイ「とびきりの鯛をお願いします!」

ホカゲ「…バンナイ君て、贅沢だけどちょっと外してくるよな」

バンナイ「は?天然マダイが本命ですけど…いや、待てよ!?」

 マツブサ「あ。僕はポテトサラダね」

 弁当係「了解であります、中濃ソース付きで」

バンナイ「俺、川魚も好物なんで…鰻とか鯉とか〜ヤナガワ…ナマズも!」

ホカゲ「魚パレード」

バンナイ「ナマズの天ぷら!もう最高にうまいよ!」

ホカゲ「で、結局なんにするん?」

バンナイ「寿司で」

ホカゲ「Σ今のくだりの意味は!?」

ホムラ「天ぷら…」

ホカゲ「今なんか言ったかホムラ」

ホムラ「天ぷら…俺が言うつもりだった」

ホカゲ「お前もナマズか?」

ホムラ「配分、考えておけ」

弁当係「りょ、了解であります!」

マツブサ「ホカゲ君は?」

ホカゲ「オレは、ハンバーグだ! ん…ちょっと待て、何で笑うんだ!!」

バンナイ「目玉焼きとチーズかけてやって、その上に旗を立ててやりなよ」

ホカゲ「デミソースな!」

ホムラ「目玉焼きには醤油だろ」

ホカゲ「目玉焼きにはマヨだろ」

バンナイ「いまハンバーグの話ですよ」

ホムラ「いや醤油だお前ら、ハンバーグだろオロシ醤油にしろ」

ホカゲ「あー待て待て、オレのリクエストだから、オレのだからマヨマヨな」

マツブサ「君たち、マヨネーズは程々にねコレステロール値が…

ホカゲ「おめーら、マヨ発注しとけ!明日ケースで届けさせろよ!!」

団員「了解であります!」

ホムラ「ホカゲの自腹でな」

ホカゲ「Σなぜだあああ!」


マツブサ「あれ。明日の予報、にわか雨だって」


ホムラ「マツブサ」

ホカゲ「マツブサよー…」

バンナイ「マツブサさん、本当やめて下さいよ?」

マツブサ「うん。ほら、グラードンって必要ですね。ちょっと待ってて…」

マツブサはスッと立ち上がると、そのまま会議室を出て行った。

ホムラ「…。」

ホカゲ「…。」

バンナイ「…。」

しばらくすると、天井のスピーカーから放送が聞こえてきた。


ピン ポン パン ポーン

マグマ団のみなさん、ごきげんよう

明日のお天気が晴れるよう ひとりひとつ

てるてる坊主を お部屋の窓に ぶらさげましょう

それではよい午後を きっとね

マツブサ

ピンポンパンポン♪


ホムラ「なんだそりゃ」

ホカゲ「おお!オレこさえるべ、折り紙もってこーい」

バンナイ「ホカゲさん、テルテルさんにゃ折り紙は関係ないよ」

またしばらくすると、マツブサが戻ってきた。


マツブサ「やあ、順調ですか!」


ホムラ「…。」

ホカゲ「マツブサ、鶴もどき やるよ」

バンナイ「マツブサさん、俺折った紙風船あげますよ」

マツブサ「え?どうして折り紙してるの??」


そこで会議室に、慌ただしく団員が入ってきた。

団員「Σし、失礼します…緊急事態です、4階です!」


ホムラ「!」

真っ先にホムラが団員を睨みつけた。

ホカゲ「おお!勇ましいな、4階担当幹部のホムラ」

バンナイ「あのー4階って…また4階ですか?」

マツブサ「あわわ…さっき何だか下の階が騒がしいなと思ったんですよ!」

ホムラ「状況は」

団員「4階北端のあかずの…あ、バトラー博士の私室より発砲音が・・!」

ホムラ「なんだ、ついにくたばったか」

ホカゲ「バト公、意外とメンタル弱いからな」

バンナイ「そんな、昨晩会った時は元気そうだったのに…」

一同の視線が、バンナイに集中した。

マツブサ「あれ。バトラー君は、いつ部屋から出てきたの?」

ホカゲ「博士は、戻ってきてからずーっと・・引きこもりだろ?」

バンナイ「いやいやまさか、よく会いますよ。お互いシャワー室でね」

マツブサ「Σえ、何ですかシャワー室って?」

バンナイ「俺とバトラーさんは、少数派のシャワールーム愛用者なんです」

マツブサ「Σそ、そうなの?シャワー室も悪くないですね!」

バンナイ「あ、お呼びじゃないんで。メンバー間に合ってます」

マツブサ「そ、そうなの…」

ホカゲ「マツブサ、セクハラよくない」


…ハア。


ホムラが大きくため息をついた。

ホカゲ「Σため息をつくな!!」

ホムラ「俺は4階の確認へ行く、会議は進めておけ」

ホカゲ「おお!まかされたぜ」

バンナイ「弁当の他に、何か決める事ありましたっけ?」

マツブサ「お花見は団員ちゃんたちが仕切りの行事だからね」

ホムラ「無ければ通常の業務に戻れ」

ホカゲ「Σ当日のゲームと景品を決めようぜ!」

バンナイ「それ、下っ端の奴らの担当」

ホムラがドアを蹴っ飛ばして出て行った。





4階。

エレベータを降りようとして、ホムラは足を止めた。

ホムラ「…。」

4階の床は、水浸しだった。

ホムラ「また請求書だな」

ホムラはエレベータから出て、濡れたフロアをビチャ・・ビチャ・・と進んだ。

通路の奥から大量の水が川のように流れてくる。

遠くの方で、水が勢いよく噴射されてるような音もする。

水道管の惨劇だ、しかし何故こうもなった。

ホムラは通路の左壁へ寄り、一度、会議室へ通信連絡を入れた。


ホムラ「俺だ、フロア4がまずい。床が浸水され、北側から水が…


ホムラが通信機に向かって喋るその横(足元)を、

仰向けに気絶した団員がひとり、通路の奥の方から

静かに流されてきて、静かに通り過ぎていった。

ホムラ「…10分以内に4階の断水を行え。最優先だ」

ホムラはエレベータあたりまで流されていく団員を眺めてつぶやいた。

ホムラ「下の階へ水が流れてるだろうから、排水作業の団員も増やせ」

通信先のマツブサ『そちらに応援は必要ですか?』

ホムラ「要らん」

ホムラが通信を切ると、更に通路奥から別の団員が流れてきた。

ホムラ「おい、起きろ」

ホムラが、足元から団員を掴み上げた。

意識が朦朧としていた団員は、ホムラに気づくと正気に返った。

団員「Σホ、ホムラさん…水道管の故障…破裂です!」

ホムラ「現場は」

団員「4階北端、あかずの…あ、バトラー博士の私室です!」

ホムラ「だろうな」

団員「更に、博士の私室手前の水道管も爆発しました」

ホムラ「…確認する、ついてこい」


ホムラはその団員を連れて、4階北端部屋へ向かった。

バトラーの有名な私室だが、その頑丈な扉は硬く閉ざされている。

閉めきったドアの下方の僅かな隙間から、水が流れが確認できるが、

フロア全体の浸水原因は、部屋の手前の右側の白い壁が崩壊しいて、

その中を通る水道管が破裂し、水が勢いよく流れ出ている。これだった。


団員「突然、4階全体にパン!という大きな音が響いたんです」

団員は説明を始めた。

団員「この部屋まで確認しに来た所、横を通る水道管が破裂し巻き込まれました」

そこで団員は、気まずそうにホムラの横顔を盗み見た。

団員「そ、それで…中には団員が…閉じ込められているはずなんです…」

ホムラ「…。」

団員「あ、あの…バトラー博士から招待された団員が…3人ほど…」

団員の話を横で聞きながら、ホムラは大きく扉を叩いた。

しかし中から何の反応もない。

ホムラ「まあ、そうだろうな」

ホムラはゆっくりとドアノブを回して開けてやった、…直後

団員達『開いたァァァァァ〜〜〜〜〜〜!!』

大スプラッシュ豪水とともに、閉じ込められてた団員達が飛び出してきた。

ホムラは、正面から思いっきり豪水をかぶった。

水圧の中でホムラが腕を伸ばし、中から出てきた団員達の衣類を掴んでやった。

溜まりに溜まっていた部屋中の水が、全て放出された後…

部屋の扉の前では、ビショビショに濡れたホムラがたくましく仁王立ちしていた。

ホムラと一緒に来た団員は、左側へ流されてピクピクしていた。

中から出てきた団員3人も無事で…うち、一人が、

グッタリとしたバトラーを抱えていた。

ホムラ「生きているのは、何人だ」

団員「い、生きてます」

救出された団員達『生きてま…Σぎゃあホムラさ・・

ホムラ「全員生きてたか」

救出された団員「バ、バトラー博士が瀕死の重傷です!」

ホムラ「そうか?何があった」

ホムラが振り返って、水を垂らしながら団員達へ近づいた。

団員達はプルプル震えながら皆くっついた。

救出された団員1「バトラー博士に、午後のお茶に呼んで頂きました…」

救出された団員2「博士が、おいしい茶葉を取り寄せたとの事で、僕たち喜んでお邪魔しました…」

救出された団員3「それで、博士が湯を沸かそうとして水道の前へ立ち、蛇口を捻った途端に…」

救出された団員1「ドカーンです!」

救出された団員2「壁が砕けて、水がバシャーッです!」

救出された団員3「博士は、水圧で壁へ打ちつけられて気絶しちゃったんです」

団員達の話を聞きながらもホムラは、バトラーの身体位を正してやると、

ペンライトを出して、バトラーの目元と口内を照らして確認した。

救出された団員1「大量の水が押し寄せてきたので、博士を抱えて退出しようと思ったんですが」

救出された団員2「何故か扉が開かなく、閉じ込められてしまいました!」

救出された団員3「どんどん水が溜まってきて、救出して頂く直前なんかは溺死を覚悟しました!」

ホムラは、バトラーの手首と首元の脈を確認した。

ホムラ「正常」

続いてホムラは、気道を確保してやり、確認のため顔をバトラーに近づけた。

団員「じ、人工呼吸でありますか…!」

団員が思わずポッと飛びのいた。

ホムラ「いや必要ない、呼吸はある」

ホムラは シレっとした表情で、バトラーの顔を見下ろした。

ホムラ「起きろ」

バトラー「…ひじょうに」

バトラーが目を閉じたまま、残念そうにつぶやいた。

バトラー「…つまらない」

ホムラは額に青筋をバキッと立てて、通信を入れた。

ホムラ「俺だ。いま断水を確認した、4階の後始末を頼む」

通信先のマツブサ『原因は何でした?』

ホムラ「バトラー博士のお遊びだ…」

通信先のマツブサ『最初の報告の、発砲音というのは?』

ホムラ「全く違う。水道管の破裂音だと」

ホムラが通信を切ると、バトラーが白い両手を伸ばしてきた。

バトラー「起こして下さい」

ホムラ「断る」

バトラーはパチリと目を開けると、むくっと身体を起こした。

バトラー「まったく、お遊びとは何です、事故ですよ」

ホムラ「あんたに付き合ってる暇はない、修理業者を手配する」

バトラー「誰かしてくれます、それより私の心配は?」

ホムラ「茶を沸かすために、水道の蛇口を捻ったと?」

バトラー「ええ」

ホムラ「ほう、フエンの水道水で茶を沸かすようになったか、いつからだ?」

バトラー「ごく最近、今日が初めて」

ホムラ「博士、反省していただきたい。うちの団員と心中するつもりだったか」

バトラー「いいえ、でも考えておきましょう君となら」

ホムラ「お断りだ」


団員「な、仲良しですね…!」


ホムラ「!」

バトラー「!」

団員「Σしまった…」

ホムラ「テメェ、明日の太陽は見たいか、言葉は選べよ」

バトラー「仲良し・・だった・・んです。ね、ホムラ君」

ホムラ「あんたと仲良くした事なんざ、一度たりもねぇよ」

バトラー「ふぅん、そうですか…」

ホムラ「なんだその目は…」

バトラー「昔の事、バラしちゃうぞ…

ホムラ「…。」

バトラー「…。」

ホムラ「風呂だ。お前ら、濡れてるだろ、風呂行け」

団員達『Σはっ! 風呂頂戴いたします…ッ!』

団員達がマッハではけた後で、バトラーが尋ねた。

バトラー「君はどうするんです、大好きな温泉?」

ホムラ「勤務中だ、部屋で着替えてまた戻る」

バトラー「はあ、退屈です…」

ホムラ「本当に止めてもらえますか」

バトラー「だって、君が遊びに来てくれないんです」

ホムラ「行くわけが無い!」

バトラー「君こそ今後は反省して、私の遊び相手になって下さいね」

ホムラ「絶対に、断る」

ホムラは力強く拒否すると、濡れた衣類の水気を絞った。

バトラー「そういえば、マグマ団の旧棟は我々が頂きました」

ホムラ「あ?」

バトラー「はい、頂きました。放置してるようなので、我々科学者の研究所にします」

ホムラ「わかった、やる。だからそっちで遊んでて下さい」

バトラー「下っ端君に教えてもらったんですが、幽霊が出るって噂なんですね!」

敷地内の林に隣接してそびえ建つ旧棟の事。(A話参照)

団員達の間では、白い手のお化けが出るという噂である。

ホムラは顔をしかめた。

ホムラ「おい」

バトラー「はい?」

ホムラ「それ、むかし俺があんたから聞いた話だぜ」

バトラー「そうでしたっけ、忘れてしまいました」

何とも珍しい光景で、ホムラがその場で頭を抱えた。





一方、会議室。


マツブサ「いやあ、4階にだけは住みたくないですね!」

ホカゲ「花見の前日に、水さしやがった」

バンナイ「バトラーさん、花見は来るのかな?」

ホカゲ「やー…来ないだろ、バト公は協調性無いからな」

バンナイ「来るよ、俺誘ってみようかな」

ホカゲ「絶対、後悔するでしょう」

バンナイ「え、何で?」

ホカゲ「博士、興味の対象外には、とことん冷たいから」

バンナイ「学者ってそんなモンじゃない?」

マツブサ「あ!場所取り部隊からメールが…特等席取れたみたいですよ!」

ホカゲ「まじでか、観光客とバトルして横取りされんよう細心の注意を払うように」

バンナイ「盗られたら、幹部に本気でしばかれます…ってさ」

マツブサ「う、うん!書いておきますね」

マツブサがピコピコとポケナビのメールを打った。

ホカゲ「明日の花見で、春の新人お披露目だもんな」

バンナイ「入団1年目を思い出すね、俺すぐ出世したけど」

ホカゲ「花見の場所取りは命がけした」

マツブサ「いや、ホカゲ君はそんな真面目な新人ちゃんでは無かったな…」

ホカゲ「そだっけ?」

バンナイ「えぇ?ホカゲさん、どんな子だったの??」

マツブサ「…前代未聞の困ったちゃんだった」

バンナイ「あ、わかりますー」

ホカゲ「Σわかるな!」


そこにホムラが怒って戻ってきた。

ホムラ「おい!4階だけ断水と言ったはずだ。何故、全館断水してる!」

ホカゲ「Σホムラ、ビチョ濡れだな」

バンナイ「何があったのホムラさん」

マツブサ「断水ほんとすいません」





一夜が明けた。

本日の天候、奇跡の快晴。

全マグマ団に告ぐ:花見、決行。

本部のほんの近所の、見事な桜の木々の下に敷かれたブルーシートの上に、

団員が一同に集結した。本日は無礼講(一部、幹部を除く)。


マツブサ「マツブサ、マイクからは50センチメートル離れるべし」

マイクテスト・マイクテスト。

一同、礼。

本日はお日柄もよく…マツブサは団員達を見渡して微笑んだ。

マツブサ「今年も見事な桜が咲いてくれました、思い起こせば設立当初…」

マツブサの長い話が始まった。

そこで座っていたホムラが、紙コップを手に持ちスッと立ち上がった。

ホムラ「はじめろ」

団員一同『カンパーイ!』

ホムラは座り直すと、さっさと飲み始めた。


マツブサ「Σまだスピーチ途中ーーーゥ!」


ホカゲ「トウキさん、じゃんじゃん飲んでくれ」

トウキ「内輪の会なのに、呼んでくれてありがとな!」

約束してたトウキが、久々に顔を見せた。

ホカゲ「オレらとトウキさんは、ダチ通り越して家族も同然だろ」

トウキ「Σ籍はまだだけどね!!」

ホカゲ「席ィ?いい席座ってるだろトウキさん」

バンナイ「トウキさん、今日はジムは?」

トウキ「ちょうど定休日だったから」

ホカゲ「トウキさん今年に入ってから全然遊んでくれねーんだぜ」

バンナイ「あんな仲良かったのに?」

トウキ「Σちょ、ちょっと先輩に目をつけられちゃって…」

バンナイ「ホカゲさんに飽きた?」

ホカゲ「Σはえ!?」

トウキ「Σやめろ、そんなわけ あるかーーーー!!」


あるかーーーー!

あるかーーーー!

あるかーーーー!

(山のこだま)


マツブサ「Σな、何事ですか…!?」

団員「マツブサさん、卵焼き落としてますよ」

ホムラ「拾って食え」

マツブサ「そうですね、ちょっと息を吹きかければ大丈夫」


フゥ。

そよ風がふいた。


マツブサ「それで、今日はバトラー君は?」

ホムラ「知らん」

マツブサ「呼んでないの?」

ホムラ「知らん」

マツブサ「あの子は戻ってきてから、ずっと部屋に籠りっきりですね」

ホムラ「…何かを企んでる」

マツブサ「Σなにを?」

団員「マ、マグマ団は存続の危機ですか…?」

マツブサ「いや、そんな、まさか…」


枝垂れた桜が揺れた、花びらが舞って、散った。


ホカゲ「フエン最高なあ」

バンナイ「大地増えるべきだね」

マツブサ「増やそう、いつか!」

ホムラ「マツブサ」

団員一同(幹部も含む)『…。』

大沈黙。





その頃。

マグマ団本部の正門。

ボロボロの鞄をブンブン乱暴に振り回しながら、ひとりの男が近づいてきた。

「ペッコッ!!」

男が口に咥えるビードロが、ぶっ壊れそうな音で鳴った。

爆音に気づき、本部の居残り組の団員達がヒョコっと顔を出した。

今日に限って貧乏クジを引いてしまい、ションボリお留守番をしてたのだが、

男の顔を確認すると、あっ!と歓喜の声を上げて駆け寄ってきた。

「凱旋だ、歓迎してくれー!」

男は勇ましく、羽織ってた漆黒色のマントを風に飛ばした。


団員「今日、うちのお花見で〜幹部さんとか誰も居ないんですよ」


「は、花見だァ…!?」

驚愕のあまり、男は口に咥えたビードロをボトッと地面に落っことした。

全身脱力したようで、持っていたボロボロの鞄も、手から滑り落とした。

「オレを差し置いて、花見だァ…どんな、どんな…!」

グツグツ煮えてきた…!男の感情が爆発しそうだ。

団員「Σま、まずい逃げよう…!」

本部へ避難しようと団員達は身をひるがえし、走り出そうとしたが…

振り返った所で、ひとりポツンと騒ぎを見物する人物があった。

バトラーだ。

団員「あ…!ハカセ危ないですよ!」

団員「ハカセ、どうか避難して下さい!」

「何が避難だァ…… ッ!?」

男の方も、団員達の先に立つバトラーを見つけた。

男と視線があうと、バトラーはニコッと魅惑的に微笑んでみせた。

その瞬間、男の動きは停止した。

「き、きみは… !」

バトラー「マグマ団にご用でしょうか」

しかしバトラーのこの第一声を聞いた男は、ポカンとして再び脱力した。

「なんだ、男か…」

残念そうに肩を落とした。

団員「あ、ハカセ声が低いから…!」

団員「そ、顔だけ見ると最初みんな期待しちゃうんだよな…!」

バトラー「君たち、聞こえてますからね…」

団員「しかしハカセ、助かりました…」

バトラー「おや、ガラス細工のビードロが…落としてますよ」

バトラーは落ちたビードロに気づき、優雅に腰を折って拾い上げると、

ハンカチを取り出し綺麗に拭ってやった。

バトラー「ビードロは…もっと優しく吹いても鳴りますからね」

そして再び、男の口へさしてやった。

「ペコ」

ビードロを鳴らしながら、男はペコリと頷いた。

バトラー「そう、ところで…こんな田舎町になぜいらしたんです?」

「もしや… お、俺の事わかるのか?」

バトラー「どうして?本州のチャンピオンでしょう。ね、ワタル君」

「!」





マツブサ「ポテトサラダおいしいですね」

団員「出来合いです」

マツブサ「Σその情報要らない」

ホムラ「天ぷら、まあまあだな」

団員「揚げたてです、どんどん運ばせてます!」

マツブサ「Σそこは大きな声で言っていいと思いますよ!?」

ホカゲ「ハンバーグうめーぞ」

トウキ「なんで目玉焼きにマヨかかってるんだ?うまいのはケチャップだろ」

バンナイ「なあ、俺の鯛寿司ねぇんだけど。鯛だけねぇんだけど・・わざと?」

団員「ヘヘ、わざと」

バンナイ「ハン!そんな事もあろうかと、実はイカ一番好きなんだよね」

団員「Σなんだって!」

バンナイ「フン、イカ大好き、ほんと好き、鯛なんか無くったって…

…。

ホカゲ「無理すんなし」

バンナイ「た、食べたかったなァ…マダイ、天然」

トウキ「ああ、それでバンナイさんの前の寿司樽はイカ寿司ばっか入ってんだな」

ホカゲ「日頃のウサ晴らしされてんだ」

トウキ「おい、君らこんな手は卑怯だぞ、正々堂々と勝負しろ!」

団員「トウキさん申し訳ありません!」

バンナイ「Σ違う、コッチに謝るんだろ!」

ホカゲ「まあ、日頃の行いによりですなぁ…」

トウキ「ほら可哀想だ!泣くなら僕の胸貸してやるよ」

バンナイ「結構です、そこはホカゲさん専用な」

ホカゲ「なんで?」

トウキ「わー… むしろ僕が泣いていい?」

マツブサ「よよよ良いですよ☆マツブサでよければこの胸貸しますよ!」

ホカゲ「マツブサ、セクハラ乱入よくない」


団員「皆さま、お楽しみでしょうか、ここで新人の批評会とさせて頂きます」


昨日から花見の場所取り隊長をしていた団員が、張りきってマイクを握った。

その合図にあわせ、幹部とリーダーのもとへ団員が数人やってきて、

A3サイズのスケッチブックとサインペンをうやうやしく差し出した。

マツブサ「はわわ…幹部のミンナ、どうか手柔らかにね…!」

花見の開始からこれまで、端っこの方で正座させられていた新人団員が、

先輩団員のホイッスルにピッピッ!と追い立てられ、一列に並ばされた。

幹部達は渡されたスケッチブックに、何やら大きく数字を書きだすと、

傍にいた団員が各自のそれを受け取り、大げさに掲げた。


マツブサ:90点

ホカゲ:50点

バンナイ:20点

ホムラ:0点


団員「はーい、注目!今年の花見宴の場所取りとセッティング合計点数、160点」

場所取り隊長が、幹部達のありがたい評価を発表した。

マグマ団員一同から、大爆笑がおこった。

桜の下に一列に並ばされ晒しモノ同然の新人たちは、

いま一体なにが起こっているのか解からず、キョトンとしている。


団員「去年の点数が250点、今年の君たちはそれを100点近く下回ってます」


ホカゲ「でも去年もホムラ、零点だった気がする」

バンナイ「そ。だから俺とホカゲさんが点数を下げたって事ですね」


団員「という結果で…今年の新人は罰ゲームが決定しました!」


ひやかし歓声と拍手。

そこで並んだ新人達がギョッとして飛び上がった。

新人「Σそんな、一言も聞いてないすよ!」

新人「Σ花見の場所取りすりゃいいって!」

団員「だから最初に、君らの今後の評価に影響するって言っただろ?」

新人「罰ゲームって何するんすか?」

団員「一番端から順にポケモンのマネしてってね、一番下手っぴな奴は…」

新人「(ごくり…)」

団員「光栄なことに、リーダー・マツブサさんと、野球拳対決だ!」

 マツブサ「僕の得意な野球拳だ☆絶対負けないぞ!」

 トウキ「Σす、すげぇ!男ばっかなのに、何も楽しくねぇ!」

 ホカゲ「一般人からそう言われると本当に恥ずかしいですな、うちの組織」

新人「や…やってられっかよ…!」

新人「そうだ、やってらんねぇよ!」

新人「一晩中、凍える思いで寝袋で過ごしたのに!」

新人「おれは、夜食の缶詰ひっくり返しちまった!」

新人達は、悔しそうに先輩団員達を睨みつけた。

 マツブサ「あ…不穏な空気」

新人「やっと花見が始まったかと思ったら、おれ達は端っこ!」

新人「うまそうな弁当も食えないし!」

新人「入団して貰ったポチエナぜんぜん懐かないし!」

新人「つまり、おれ達が何を訴えたいかと言うと…!!」


ワタル「お 前 ら 全 員 破 壊 光 線」


ピカッと、辺りが白く光った。

新人達が、先輩団員達に反旗をひるがえそうと一歩を踏み出した瞬間だった。

先輩団員達は、迎え撃とうと戦闘態勢に入ろうとしていた。

幹部達は、特等席で弁当を食べながら成り行きを楽しもうとした所だ。

リーダーは、制止に入るべきか迷った顔でオドオドしてた。

まず先に、トウキがホカゲの腕を掴んでスライディングして避けた。

バンナイが「げッ!」と叫んで、飛び込み前転風に避けた。

ホムラは、座ったままで顔を横へ傾けて避けた。

マツブサは、地面の石につまずいて転んで避けた。

直径3メートル程ものまばゆい白の光線が、

マグマ団の新人団員と先輩団員との間を一気に貫いた。

新旧団員達は突然の大攻撃の迫力に度肝を抜かれ、

全員ドミノのように、そのまま倒れ気絶した…。


白く美しかった桜木々の間に、ポッカリと惨たらしい穴があいてしまった。

桜の吹雪が、しばらく狂ったように乱舞したが、やがて全てが落ち尽きた。


トウキ「いったい、何なんだっ!」

トウキが顔を上げた。

マグマ団幹部達は、トウキの周りに集結して突然の攻撃元を警戒した。

だが、確信していた。

ホカゲ「こんな見事な破壊光線、打てるヤツはこの世にひとりしかいない!」

バンナイ「やい、犯人…ネタは上がってるぜ出てきな!」

桜の太い幹の後ろから、ワタルがヒョコッと顔を出した。


ワタル「久しぶりだなァ、マグマ団諸君


ワタルはニヤリと歯をみせて笑うと、漆黒のマントを風に飛ばしてみせた。

装着してるヒップ・ホルダーが見え、古いボールが6つ収められていた。

ホカゲ「Σな、なんて凶悪なツラなんだ…!」

バンナイ「こんな…のどかな田舎町で破壊光線ぶっ放すなんて…」

マツブサ「ちょっと近隣住民の皆さんに説明をしてきますね、あと宜しく!」

ワタル「Σえ、マツブサさんどこ行くんだ!」

マツブサ「ワタル氏、お久しぶりだけど、また後でね!」

ワタル「わかった!いってらっしゃい!!」

マツブサ「ご理解いただけるよう頑張ってきます…トホホ」

ワタル「で!お前ら、どうしてオレを抜きにして花見してんだァ!」

ホカゲ「いや知らねーしワタルさん、いつホウエン戻って来たんだ?」

バンナイ「ほんとワタルさん、なんでホウエン戻って来ちゃったの?」


トウキ「ワ、ワタルさ…


一番後ろでトウキがビックリし過ぎて、のけ反っていた。

トウキ「最悪だ…本物だ…」

ワタル「Σト、トウキなのか!? すげぇ本物だ…!!」

ワタルもビックリして、のけ反った。

トウキ「い、いつもシバがお世話になってます…!」

ワタル「こちらこそ、いつもシバが世話になってやがります…!」

トウキ「Σえ」

ワタル「Σえ」

トウキ「ええと…どうしてフエンタウンにいらっしゃるんですか?」

ワタル「お前こそ。ホウエン地方でもムロ島だろ、ムロ島、海!」

ホカゲ「Σふたり、知り合いなのかやっぱ!?」

トウキ「いや、初対面だよ。…でもほら、とっても有名だから」

ワタル「シバがちょいちょい写真見せてくるから、一発でわかったぜトウキッ!」

トウキ「しゃ、写真…?」

ワタル「まさか実物に会える日が来るとは…感動もんやわ」

トウキ「あの… 僕、あいつと写真撮った事あったかな…」

ワタル「何」

ホカゲ「Σざ、雑誌の切り抜きじゃねーのか!?」

ワタル「いや、生写真…」


え… え…


ワタル「Σそ、そういえば土産持ってきたんだ土産!」

ワタルは、持参したボロボロの鞄をバシバシ叩いてアピールした。

トウキ「どうせ怒り饅頭だろ…どうせシバの回しもんだろ…ハハハ」

ホカゲ「Σこ、こんな自暴自棄なトウキさんはじめてです・・・!」

ワタル「悪ィ、ごめんな、ほ〜ら怒り饅頭だったぜ…ハハハ」

ワタルのボロボロの鞄の中から、ボロボロに潰れたチョウジ銘菓が出てきた。

トウキ「ああ…そういえば…バレンタインは怒り饅頭ありがとうございました…」

ワタル「ああ…そういえば…バレンタインは間違えて饅頭送っちまったようだな…」

二人『怒り饅頭…ハハハ』

どんより…

バンナイ「…なんで春うららの時分に、こんな暗いの」

ワタル「すまねぇなトウキ、オレのビードロやるから許せよ!」

気を取り直してワタルが、同じ鞄の中から今度は綺麗なビードロを取り出した。

ワタル「てかオレの使用済みだけどな!」

先程ワタルがペコペコやってたガラス製のビードロだ。

トウキ「うん?そんなのいらないや…」

ワタル「Σえ!?」

ホカゲ「トウキさん、ワタルさん意外にも心がデケリートなんだぞ」

バンナイ「デリケート。そう、断るならやんわり、優しくどうぞ」

トウキ「そうなんだ、ごめんなさい。でも、いらねぇ!!」

ワタル「Σはう!?」


ホムラ「馬っ鹿か、テメェら…」


ホムラが無表情で嘲った。

ホカゲ「ワタルさん、むしろホムラがビードロ欲しいって言ってんぜ」

ホムラ「なぜだ…」

ワタル「同情かよ、いらねぇ畜生…ビードロなんか…明後日飛んでっちまえ!」

ワタルはビードロを宙へ放り投げると、直後

蹴鞠のようなフォームからロング・シュートした。

光彗星のように綺麗に空へ走って消えたビードロの軌跡を、

ホムラをはじめ一同は呆気にとられて見つめた。

ホカゲ「フエン上空にキラリ危険飛行物な」

バンナイ「そのまま大気圏突破しちまえよ」

トウキ「トクサネ宇宙センターから怒られちまう!」

ホムラ「なぜだ…」


ワタル「と…いうわけで今年も避暑に来たんでヨロシクなっ!!」


ついにワタルが両手を広げて宣言した。

ホムラ「避暑だと…?」

ワタル「もう大会中、フエンタウンが恋しくてたまらなかったんだぜ!」

ワタルは一同を見渡して、上機嫌に言った。

ホカゲ「ワタルさん、また居候滞在するのか?」

ワタル「おう!今年はロング・バケーション全部フエンで、過ごす!

ホカゲ「Σもう決定か。オレらの事情は関係無しか」

バンナイ「勘弁してよ、シルフカンパニーの広告仕事はどうするの?」

ワタル「もう済ませてきたぜ!たまに呼ばれるかもだがオレにもわからん!!」

そこでワタルは、新品ピカピカのポケギアを取り出してみせた。

ホカゲ「Σおお!ワタルさんのポケギア復活か!!」

もはや何代目か不明だが、また壊すまでは業界と連絡が取れるという訳だ。

バンナイ「そういえば最近、デボンが"ダイゴカラー"でポケナビをリリースしたよ」

ホカゲ「Σおお!あれな、クール・クリアな水色の最先端ポケナビな!」


ワタル「Σまたパクリやがったかデボン・コーポレーション!!」


トウキ「あの…ワタルさん、来季リーグに向けて修業とか…」

ワタル「修業はする…しかし、来季の事は…」

ワタルの顔が曇った。

ワタル「もしかしたら欠…


 ビィィィィッ ドォォォン


ホムラ「何事だ」

バンナイ「新たなフスベ人の襲撃ですか?」

ホカゲ「Σこ、これはいつぞや聞いた破壊光線の着メロだ…!?」

ワタルは、憎たらしそうに新品のポケギアを握りしめた。

ワタル「あ、悪ィ…妹からポケギア着信だ。 あーもしもし俺だ

電話の声『βΔκΩΩΩΞ!!!(`皿´)!!!』

ワタル「バカってなんだバカって あ!?どこだっていいだろ!?」

電話の声『£℃‰@ΨΠω○◎●〜!!!!!(`А´)!!!』

ワタル「絶対教えねぇ!!絶対来るなよ、迷惑だからな!!!」

電話の声『()シバたんΘΛΘ!!!!!(`н´)!!!』

ワタル「Σな… す、すいません…。ああ、ああ、切るな…」


ワタル「負けた…」

ホカゲ「Σやっぱり負けてた…!」

ワタル「誰かうちの妹を嫁に貰ってくれねェか…?」

バンナイ「うそだろ…今の爆音、会話だったの」

トウキ「ワタルさん、ひとつ、シバを婿にどうですか!」

ワタル「Σシバはダメだ!シバはオレと一緒に、妹の仲人だ!!」

トウキ「僕、本当にシバで困ってんですよ!」

ワタル「オレだって、イブキで困ってんだよ!」

ワタルがトウキに掴みかかった。

そこでホムラが軽く手を掲げ、制止した。


ホムラ「お前ら取りあえず、座れ。花見を仕切り直してやる」


そしてブルーシートの上に戻っていった。

ホカゲ「ワタルさん、花見宴の仲間に入れてやるよ…優勝おめでとうな」

ワタル「ホ、ホカちゃん…!」

バンナイ「ワタルさん!俺絶対、ワタルさんが防衛成功するって信じてたぜ」

ワタル「お前に言われても嬉しくも何ともねェ」

バンナイ「Σ酷い!トウキさん、いよいよ胸を借りていいですか…」

トウキ「うわ、よーし飛び込んでこい、だって可哀想だ!」

ホカゲ「なんだか顔が赤いぞトウキさん…!」

トウキ「そ、そんなつもりじゃ…あ、ワタルさん防衛連覇おめでとうござます」

ワタル「ついでか、オレは!」

バンナイ「そうだワタルさん、地毛の赤い髪なんだね…良いよ!」

ワタル「ああ、染め直す暇もなくセキエイ出てき… ピンクが地毛だがな!

トウキ「あれ、赤じゃなかったっけ…?」

ホカゲ「しかし再びワタルさんと共存するとなると、耳の鼓膜が心配です」

ワタル「いっその事、フエンに土地買っちまおうか迷ったんだが!」

バンナイ「驚くほど土地安いでしょ、フエン」

ワタル「だがやめた、マグマ団ライフのが楽しいからな!」


ホムラ「おい」


ワタル「なんだァ!」

ホムラ「まさか、昨年もこんな勝手に居候始めたのか…?」

ホムラが引きつった表情で、ワタルを指した。

ホカゲ「そう強引に」

ホカゲがコクコク頷いた。

バンナイ「それはもう我が儘に」

バンナイは斜め上の空を見つめた。

ワタル「去年はすれ違いになっちまったが、今年は楽しくやろうぜホムラ!」

ホムラ「…施設を破壊しない事」

ワタル「おう!」

ホムラ「…うちの事情は他言無用の事」

ワタル「おう!」

ホムラ「…俺の部屋を二度と占領せんと諦める事」

ワタル「Σお、おう!」

ホムラ「まあ、置いてやらん事もない」

ワタル「友よ…!!」

ワタルがホムラの肩を抱いて、バシバシ叩いた。

ホカゲ「Σワタルさんに甘ぇぞホムラ!」

トウキ「はぁ…チャンピオンって、自由に出来ていいな」

ワタル「お前もツワブキ倒してチャンピオンになっちまえよ!」

トウキ「Σ命と心の数が足りない!」


そこへマツブサが戻ってきた。

まるでタイミングを計ったごとく。


マツブサ「あれ、ひと段落したの?」

ホムラ「マツブサ」

ホカゲ「ワタルさんが今日からまたマグマ団です」

マツブサ「そうなの〜…ところで、珍しくフエンに隕石が落下しました」

ホカゲ「なんだと!?」

マツブサ「凄いよ隕石…宇宙文明の存在立証かも。隕石に模様が入ってたんです」

ホカゲ「Σう、宇宙文明!オレちょっと現場取材に…!!」

バンナイ「どんな模様。透き通ったフォルムに、赤いお花ですか?」

マツブサ「そう、まるでガラスを製品を溶かしたような…そこにお花模様の痕跡が」

トウキ「その隕石って、DNA鑑定できるかな…できるなら」

ワタル「まずい!オレらフスベ人が…宇宙人類って事になっちまうぜ!」

ホカゲ「どゆこと?」

バンナイ「ワタルさんが、惑星フスベの宇宙怪獣って事ですよ」

トウキ「Σワタルさんがエイリアンか!」

バンナイ「ワタルさん、口から破壊光線だせるんだよ」

ワタル「…。」

ワタルは静かに寄って、バンナイの首をロックした。

ホカゲ「Σす、すげぇ!マグマ団ではワタルさんをUMA認定します!!」

ホムラ「ホカゲを構うな、飲み直しだ」


トウキ「ところで今更だけど、初歩的なこと聞いていい?」

トウキが手を上げた。

やっと言い出せたようで、顔が紅潮していた。

ホカゲ「どうしたトウキさん」

バンナイ「答えられる範囲でお願いしますね」


トウキ「なんでみんな、ワタルさんと知り合いなんだ?」


一同「…。」

ワタル「そりゃお前…」

ホカゲ「話すと長いんだ」

バンナイ「マツブサさん、トウキさん用にトビキリのご説明をお願いします」

マツブサ「Σお任せなさい!」

マツブサが軽く咳払いをした。

マツブサ「じ、実は…ワタル氏もマツブサ家系の子なんです!」

ワタル「オレが」

マツブサ「アブラハムみたいでしょ」

トウキ「?油ハム?」


ぼちぼち、ノビてた団員達も意識を取り戻してくる頃だった。





おわり











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