|
「明日リゼンブールに帰ろうと思うんだけど」 そう告げたら、あいつ―双子の妹― は少し哀しそうに、苦しそうに、「わかった」と言った。 機械鎧の破損。 これは致命的だ。故郷に戻り、「幼馴染み」のアイツに直して貰わなくてはならないのだ。 その後、立ち寄った大きな街の宿―元気のない あいつを喜ばせようとして― 豪奢な内装の部屋を選んだ。 我ながら綺麗事のようだと思ったが、仕方が無かった。 あいつは、微かに微笑んだようだったが、その金色の瞳には哀願の色が拭えていないのが嫌でも解った。 ―オレは、そんなカオをさせたい訳じゃないのに。 「行かない」と言ったら、彼女はどんなカオをするだろうか。 喜んでくれるだろうか。それとも、また哀しむのだろうか。 明日の列車の券を買いに行こう、と誘ったが、やんわりと断られた。 その言葉は、ひどく気を使ったものだった。 そしてオレは弟と共に、最寄りの駅へと向かう。 無理しているとしか思えないカオで、「いってらっしゃい」と言う、彼女に。 ただ「ああ」としか返事をするしか出来なかった。 ―言い出したのは、オレなのに。 何時からだろう。あいつが他の男と関わっていることが、ひどく不快に思うようになったのは。 昔から、過保護だとは言われたが、そうじゃなくて、もっと。―キョウダイアイなんかじゃなくて、限り無く嫉妬に近いモノ。 キョウダイなのに。オカシイじゃねえか。 …彼女も、そうなのだろうか、― ああ だから。 「幼馴染み」のアイツが居るから。 オレが昔好きだったから。 (でもそれは違った恋じゃなかった、) だから そんなカオを するのか、? 「それ」でもオレを抱き締め返す彼女は何だ? わからないわからないわからないわからないわからないわからないわからない 解らない解る訳無い けど抱き締めるんだそれだけは判る 「…兄さん?買わないの?」 弟の声で、ようやく気付いた。 ああ、そうだ。ここはもう駅だ。―乗車券を、買わなくては、 「あ、ああ。……っと、明日発のリゼンブール行きの券を、」 そう言って、黙った。受付の人に、訝しげに何枚ですか、とたずねられた。 ああ、 さんまいだと、いえな い、。 「…兄さん?どうかしたの?」 買えない。お前の分の券、買えない。 ―列車の券いちまい。彼女の表情ひとつ。俺たちふたり。それだけで。 オレは憂鬱になる。戸惑ってしまう。ただ、憂鬱がぐるぐるとループするんだ。 ―お前の元に帰れない、故郷に帰るはずの一日前の、騒がしい駅の真ん中。 (本当はお前の分、買ってやりたくないんだ、) (20090816) 憂鬱の無限ループに苦悩するふたり。 |